12月から1月にかけての研修会でお話したこと

12月末から1月初めに、「埼玉県特別支援教育研究会 冬の研修セミナー」「埼玉県特別支援学校長会主催専門研修」「筑波大学附属聴覚特別支援学校職員研修会」で講演をさせていただく機会がありました。

3つの研修会では、まず「人々の意識や社会のあり方の変化」についてお話をしました。

今年の研修会でご紹介したのは、2024年1月1日の日本経済新聞朝刊1面に掲載された「昭和99年 ニッポン反転」という記事です。

今年は昭和だと99年。
今なお残る様々な昭和のシステムは時代に合わなくなっています。

記事には、
「昭和をやめ、若い力を引きだそう」
「多くの人は若者が希望を持ちにくい社会を案じている」
「年功序列。変化が生まれない」(大学3年、22歳)
「変わらない社会は良いことに見えて、成長への意志を奪う」
とした内容が書かれています。

その中で紹介されていた建設ITサービスの現場サポート株式会社の取り組みがとても目を惹きました。
Good Place To Workの記事厚生労働省働き方改革特設サイトの記事も参考にしてみると、とても印象的だったのは、

「若手が生き生き働く組織づくりのヒントは”主体性”」
「経営理念をつくるプロジェクトにも若手が参加」
「自分たちでつくった理念だからこそ、本気になって叶えたいと思えるし、自分が何をすべきか見えてくる」
「”良好な人間関係”への強いこだわり コミュニケーションがオープンで活発」

といった点です。もともと離職率の高かった会社の風土を1から新しいものに創りあげていったとのことでした。

学校という組織における若手の育成についても、授業での子どもたちの学びについても、この取り組みは参考になるヒントが隠されているのではないかと思います。
また、今後の特別支援教育で大切になるポイントとして、次のこともご紹介しています。

令和5年(2023年)6月に閣議決定された第4期教育振興基本計画には、共生社会の実現に向けた教育の推進の1つとして、「支援を必要とする子供の長所・強みに着目する視点の重視」が示されました。

”支援を必要とする子供やマイノリティの子供の他の子供との差異を「弱み」として捉え、そこに着目して支えるという視点だけではなく、そうした子供たちが持っているさせていく視点(エンパワメント)を取り入れることも大切”

という視点です。

そうした長所・強みを引き出し可能性を発揮させていくには、「アイデアや表現のツールとしてICTを活用すること」「ICTで学びの選択肢を広げること」「今までの当たり前や前例に捉われず、柔軟な発想やアプローチを試みること」がとても重要になると考えています。
さらに「AIをどう活用していくか」も今後の教育で求められるようになっていきます。

生成AIについても、「まずはご自分で試してみて、何ができるか、どんな機能があるかを実感してみましょう」ということをお話ししています。

たとえば、上記のタブレットを操作する子どもの画像は、生成AI「Adobe Firefly」で作成したものです。
自分のイメージ通りの画像を生成するにはプロンプトをどう工夫したらよいか、実際に試行錯誤しながらやってみると、いろいろな気づきがあります。

新しい技術が登場した時にどう扱うのが正しいのか、すぐに得られる正解はないので、まず試してみて、どんな可能性があるかを体感してみることが大切ではと思います。
人を育てる営みや教育は、すぐに目に見える成果が得られることは少ないかもしれません。
こんな格言があります。

「If you spend your time chasing butterflies, they will fly away.
If you spend your time creating a beautiful garden, the buttferflies will come to you.
And if they don't come, you still have your garden.」

私たちが教育に取り組んでいく際の大切な示唆がこの言葉にあるのではないか、最後はそんなお話をさせていただいています。

埼玉大学教育学部附属特別支援学校授業実践研究会で講演を行いました!

代表理事海老沢が、埼玉大学教育学部附属特別支援学校授業実践研究会で講演を行いました。「子どもたちのアイデアや表現を引き出すICTの活用」をテーマに、Mentimeterでインタラクティブなやりとりを交えながら、お話をさせていただきました。
120名を超える方にご参加いただき、たくさんのご感想をいただきました。その一部を抜粋してご紹介いたします。

・知識を伝えるだけではなく、子どもたちのアウトプットも考慮して授業づくりをしていかなければならないということを学ばせていただきました。子どもたちと一緒にワクワクできる取り組みを考えていきたいと思います。

・魅力的な情報がたくさんありましたので、もっともっと多くの特別支援学校の先生方に参加してもらいたいですね。
参考になる書籍もご紹介頂きありがとうございます。今後の実践に活かせる内容でした。

・クリエイティブな学びこそ、特別支援教育が率先して取り組んでいくことだと感じました。

・新しい情報がたくさんあり、大人も日々知識をアップグレードする必要性をひしひしと感じました。

・本質はICTの活用ではなく教育観や授業観である、とのお話が心に残りました。実際にいろいろとトライしながら活用していけたらと思います。

・ICTによって児童生徒の力を引き出せる、新しい可能性を感じました。

・先進的な内容で、ICTを教育に活用するにはこうあるべきという望ましい姿を海老沢先生の実践をもって具体的に教えていただきました。

・講演の中にありました、日本は学習にICTを使えていないというOECDの調査結果には愕然としました。この結果はひとえに学校でICTを使った学習ができていないからだと強く感じます。そもそも現場の教員にもスマホやタブレットは遊びの道具だと考えている人が多くいます。そういった考えがベースにあるので、学校ではあれもこれも禁止ということにつながっているのだと思います。
まずは教員がアウトプットにICTを使えているか。ネットで調べてみるだけ、動画を見るだけといった使い方しか教員ができていなければ、とても子どもたちからICTを使った創造性を見出すことはできないと思いました。

・ぜひ1人でも多くの教員に海老沢先生のお話を聞いていただき、胸を熱くしていただけたらと思います。私自身も積極的に実践して発信していきたいと考えています。

・とにかくワクワクする講演でした。海老沢先生の話を聞いたのは久しぶりでしたが、共有していきたい実践ばかりでした。

・大変勉強になりました。具体的に実践をお話しいただき、月曜日からの授業に早速生かしていきたいと思いました。アイディアは無限に形にできるんだ!ってことを、子どもたち自身に感じてもらえるような授業を作ってきたいです。

・子どもたちの発想を、その子に合ったやりやすい方法で表現するためのツールとして、ICTはとても有効なことがわかりました。子どもの内面を表現するのにiPadはとても優秀だと感じました。
また教師自身の頭を柔軟にしなければ、ICTを有効的に活用することはできないと思いました。

・とても有意義な時間をありがとうございました。通常学級の担任をしていますが、支援が必要な生徒がいます。その子の良い部分を引き出すためのヒントを得られた気がいたします。多くの子どもたちに実践したいと思いました。

・ICTをどのように活用したらよいかを具体例を基に知ることができました。また、ICTに使われる授業ではなく、ICTを使う授業をどのように行えばよいか学ぶことができました。ありがとうございます。

・大きな視点でICTの活用について捉える考え方を知りました。子どもたちが自分で創り出すアウトプットのツールとしてのICTという考え方がわかりました。

・iPadを活用したいと強く思いました。私自身がまだiPadに慣れていないこともあるので、やり方をまず知って自分が楽しむことから始めてみようと思います。

・ICT活用の様々な具体例を挙げていただきながら、Creativityの面白さを学ばせていただきました。大変興味深かったです。

・多様化する子どものニーズ対して、ICT機器は必要な支援をするための可能性をたくさん秘めていると感じました。子ども1人1人の創造性を育てる授業への変革が必然になってきていることを確信できました。ありがとうございました。

・目から鱗のお話ばかりでした。たくさん活用したいと思えました。ありがとうございました。

・本日は貴重なご講演ありがとうございました。写真や絵、タッチのみでの授業で指導が広げられず悩んでおりました。今回学んだことを基に、子どもたちがより楽しく、そして発想を広げられるような授業を他の教員とともに考え、実践してまいります。今後もご講演していただけましたら、ぜひ参加させていただけたらと思います。

・子どもの想像力や創造力をICTを使って引き出す様々な実践を聞くことができて、とても勉強になりました。子どもたちの豊かな作品を見て、ぜひ今後の自身の実践にもいかしていきたいと思いました。ありがとうございました。

・様々な実践事例、そして学習している子どもたちの明るい表情と成果を見ることができ、今後ICTを積極的に活用していきたいと思いました。まだまだ使いこなせてはいませんが、まずは使ってみるところから始め、周りの職員とも検討しあいながら実践を進めていきたいと思います。ありがとうございました。

・心が動くワクワクする教育を通して、多くの人がより幸せになれるとよいと思いました。

・身近にあるアプリの活用方法でとても分かりやすかったし、ぜひ使ってみたいと思いました。インプットだけでなく、アウトプットするツールとして、iPadを使った授業にチャレンジしていきたいと思います。

・非常に勉強になりました!新しいICTの活用方法など知ることができて,話を聞いていてとてもわくわくしました。今日学んだことを子どもたちにフィードバックすることができるように、まずは教員がICTの様々な可能性を知り,使っていくことが大切であると感じました。素晴らしい講演をありがとうございました!

・クリエイションから学びに繋げていくイメージを具体的にもつことができました。

・「自分なりの価値観をどう育てるか」ということを聞き、本学級にいる児童達にこそ必要な観点だと感じました。今回初めて知る様々な実践を教えていただき、活用して児童の可能性と表現する手段にしていきたいと感じました。

・私たち大人が思っている以上に、子どもたちは柔軟で、人に「伝えたい」「共有したい」と思っていることが、海老沢様のお話を通じて伝わってきました。
またその手段として、ICTが担う役割がいかに大きいのかがわかりました。

・どうしても私たち大人は、「こちらが完璧に使えるようになってからじゃないと…」と思ってしまうことも多いと思います。そこがICTの活用を阻んでしまう一つの原因かもしれないなと、本日のお話を聞いていて感じました。
私たち大人が「教える」というスタンスを外して、子どもたちと一緒に使い方を習得していきながら、「こんな使い方あったよ!」「こんな使い方できそうだよ!」とお互いにシェアしながら活用方法を探っていく、そんな柔軟さで学習活動を進めていけたらいいのかなと感じました。

・いろいろなツールを活用するアイデアや工夫を創造していくことが、必要だと感じました。児童生徒のほうは、ツールの使い方を覚えて、自由に使うことで、教員には思いもよらない表現が出てくるのではないか、そのことを肯定的にとらえて、発信していくことで、新たな学習が見いだせるのではないかと、発展性を期待することができそうです。ありがとうございました。


 オンラインでの講演はなかなかリアクションがわかりづらいのですが、こうした前向きなご感想をいただくととても手応えを感じます。
 少しでもたくさんの方々が「自分でもできそう!やってみよう」「自分もワクワクしながら授業を作ってみよう」とアクションをおこすことができるように、今後もブラッシュアップをしながら講演に臨みたいと思います。ありがとうございました!